カントクの寝言  緩・緩・急・緩急 (2002.12.04)
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”パス&ゴー”というコトバがある。パスを出した後、その場から移動して次にパスを受ける場所を確保する(すなわちDFのマークを外す)ということだ。同義で、パスを受けた時にまっすぐ足元にストップせずに”ボディーターン”をして、もともと自分のいる場所と異なるところにボールを移動させて確保するというスキルがある。まあ、スキルっていうほどじゃなく基本だ。

 レアルのパス回しは全く”パス&ゴー”がなく、スペースを狙ったスルーパスもない。単純に味方の足元にパスをつなぐだけだった。本来、そのパスはDFの餌食のはずなのだが、なのにそのパスがつながる。何故?前述した”ボディーターン”と正確なパス技術につきるのである。さらにパスコースを見つける判断が早い。いや、パスを受ける側の判断も含めて早い。フムフム氏曰くの”イメージのシンクロ”である。だから、レアルの選手は動かないが、ボールはおそろしく早いテンポであちこちに行く。しかし、これだけでは単純なパスゲームであり、DFはゴール前を固めていれば点はとられないはず。しかし、そこに攻撃としてのレアルの最後の一味が加わる。それが”緩急”であった。すなわち、前述のパスゲームをゆっくりと展開し、タイミングをみて(多分ゴール前にパスが出せると判断した時)そのテンポはいきなり”急”になる。しかも全員が同じタイミングで。実はこのタイミングのシンクロ(また使ってしまった)は、意外と簡単だ。パスの受け手がフリーランニングをして、スペースを作った時に行えばよいだけである。

前半終わるとカメラマンが移動

 と、文章にしてしまうと味も素っ気もないのだが・・・。ふぅー(また使った)。ともかく全ての技術、判断が早くて正確、かつ意識の統一がある。これはサッカーだよ、バスケットじゃないんだぜ。なんでこんなことが出来るのよ、というのが僕の率直な感想であった。ある場面、いつもの”緩”のパス回しからフィーゴが左サイドにスペースを作り、”急”が始まった。フィーゴがちょんとつま先で誰もいないゴールライン方向にパスを出す。「あっ、ミスだ。」と僕が思った時、そこにラウールが走りこんでいた。つまり、僕にはラウールの動きが見えていなかったのだ。いくら素人とは言え、スタジアム全体を見れる位置にいる僕が見えないラウールの動きをフィーゴは察知してパスを出していた。いやぁー、凄かった。なんだかんだの不満を見つけることも可能かも知れないが、僕は純粋にこの楽しいサッカーに酔った。その楽しさの種類は、ペレ、ジャイルジーニョ、トスタンの70年メキシコ大会のブラジルチームを観た時と共通していた。

 さて話は変わり、僕はサッカー観戦時はボランチを中心にみることが多い。もちろんチームの”ハンドル”であり、off the ballの時のボランチの動き、DF陣との連携等、ゲーム組立の中心であるからという理由もあり、同時にオフェンシブな選手ほどスター扱いされていない(よーするにマスコミに迎合したくないという僕のひねくれた気持ち)点も大きな理由だ。ということで、今回はマケレレとカンビアッソ、この2人を中心に観ていくつもりだった。しかし途中で気が付いた。2人とも大スターじゃん。スターは嫌いだ。じゃあ、エルゲラを見よう、いやミッシェル・サルガドの堅実な守備を見よう・・・。ゲゲゲ、みんなスターじゃん。しごく当たり前のことだが、レアルには僕の価値観として見るべき選手、すなわち地味な選手は1人もいなかった。と思っていたら次第にあったまに来た。そしてオリンピアを応援し始めた。しかし、レアルの美しい攻撃にもオベーションを行う。

 後ろで見ていたおばさん(か、おねいちゃんか微妙な年齢)が、彼女の連れに言っていたコトバが聞こえた。
「この人たち、どっちを応援しているのかしら?」
「ばーーーーーか!フットボールを応援しているんだよ!」
 僕は心で囁いた。
  

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