カントクの寝言  よく遊び、よく蹴れ (2004.10.21)
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■歓喜のロスタイム逆転

 翌日の2回戦、場所は倉敷福田運動公園、キックオフは11:50と昨日と一緒である。オイラは、シンプルに「神戸」(小さい字で「夜遊び注意」)と書いた、ゲーフラというかダンマクというか、単なるA3 2枚の紙をパイプ椅子に貼り付け、バック側真中に居座る。昨日と、そして昨年とも一緒で「サポーター」はオイラ夫婦2人だけだ。

ゲーフラ作り?

 前半早々、いつも決定機を外す(坪井部長談)15番の内野がコーナーからの見事なヘッドで先制。ところで今日の相手は昨日静岡FCを4−3という激戦で破った金沢SC。ただ、あなどれないとは言え、九州の覇者ホンダロックと比較すると、組みやすい相手であることは確かだ。そこに早々の先取点。ここで選手は安心してしまったようで、その後攻めのカタチが作れず、かと言ってピンチにもならない”まったり”とした時間が流れていく。声は出ているが、小さなミスが多くどうも集中力に欠けているようにみえる時間帯、その隙をついてか、偶然なのか、金沢SCがポジッションを高め、神戸DFのミスが重なり、前半に2点とられ逆転されてしまった。ここでハーフタイム。

倉敷福田運動公園 まったりした展開に、ボール
ボーイもいねむり・・・。

 後半、神戸はかなり後ろからガツガツやられていた6番大門に替え、7番溝口を投入。昨日の2トップに戻し、狙いは逆転だ。しかし、なかなか点がとれない。ペースは神戸にあり、相手は完全に引いているのに、センターライン付近からのアーリークロスが多い。これのほとんどは5バックになっている相手DFに跳ね返され、たまにウラをとれてもセンタリングが合わせられない。相手はボランチがデフェンスラインに入ってしまっているため、中盤はガラ空き。だからこそ、あせってアーリーを放り込まずに、中盤でまわして相手ボランチを引き付ければ、もしくは中盤からヨコパスで崩せば、絶対に穴が開くのに、神戸はあせりからなのか、あいかわらず放り込む攻めが大半。そのペースのまま、時間は後半30分を経過する。

 そして遂に後半31分に歓喜が訪れた。相手DFのもたついたボールを奪った17番北川のミドルシュートがゴール右端に突き刺さった。同点!こうなると、もともとペースを握っていた神戸の攻撃は鋭さを増し、また金沢の守りはあせりを呼び、一方的な神戸ペース。後半39分、左サイドから持ち込んだ7番溝口のループシュートがGK頭上を越える。「入れ、入れ」オイラ夫婦は念じる、が、なかなかゴールネットは揺れない、「入れぇー」、ボールがネットに止まり、ゆっくりとゴール内に落ちた。もう、全員両手を突き上げ、勝利を確信。もちろん実際にはシュートを打ってから両手を突き上げるまでは、1秒程度の時間だったろうが・・・。

 勝った!選手は相手ベンチ、本部に挨拶に行った後、松永さん、坪井さんも含めて、全員がバック側に駆け寄る。オイラ達、たった2名のサポーターへの挨拶だ。その時の、選手達の本当にうれしそうな顔、そして顔、さらに松永さんが歩み寄り、「本当にありがとうございました。」と握手をしてくれた。その後はめちゃくちゃだ。オイラ達までピッチに入り、ゴール前で記念撮影をしてしまった。みんなも、オイラもトモコさんも、本当にうれしそうな笑顔だった。

 さて、オイラたちは帰らなくてはいけない。神戸FCのみんなと来年また会う約束をしてバス停に向かった。バスを待っていると、11番岩田のクルマがバス停前を通り過ぎていった。その数秒後、同じクルマが反対車線からUターンをしてくる。オイラ達を見たので戻ってきてくれたのだ。そして結局、倉敷駅まで送ってもらった。こうして、神戸FCとの濃密な2日間が終わりを告げたのである。

■草サッカーの天皇

 神戸FCのサッカーって一体何なんだろう。オイラは帰りの飛行機の中でずっと考えていた。サッカーそのもののテクニックは決して優れたものではない。しかしよく走り、冒頭の城選手の言葉に表れているように勝つためのマジメにサッカーをする。さらに驚いたのは、その当たりの強さだ。正当なショルダーチャージはもちろん、2日間のゲームで何回スパイクとすね当ての当たる音を聞いたことだろう。これは、到底マネできるレベルではない。
 一方、彼らはピッチを離れると普通の若者だ。食事の時もクルマに乗ってる時も、おねーちゃんのハナシばっかしで、サッカーの話なんて聞いたことがない。そして”合宿”を格好の遊びととらえ、夜は帰ってこない(笑)。

 監督も放任だ。
最初の晩、ある選手が翌日の対戦相手について尋ねた。
「監督、今日は結局どっちが勝ったんですかね。」
「知らん。前半しかみておらんしな。」
「俺達、明日の対策とかしなくていいんですかね。」
「おまえら、ミーティングするっていったって、遊びに行ってしまうんだろ。まあ、おまえらが試合しながら対策考えろ。」

 別の場面で、某選手がイエローをもらい出場停止になる。
「監督、明日のボランチはどうします?○○がやるなら、俺のほうがマシじゃないですか?」
 別の選手。
「おまえよりも○○じゃないか?」
 で、監督。
「知らん、おまえらで勝手に決めろ。そんなことより、オレは明日(月曜日)会社を休めるかどうかを算段しなくてはいかないんだ。ポジションなんか考えているヒマはない。」

 こんな具合・・・。

 これは、ある側面”いい加減”だ。多分、全社に出場してくるチームの多くは、MTGもやり、門限もあるだろう。監督の指示も徹底しているだろう。では、本当に神戸FCはいい加減なチームなのか?
 視点を変え、検証する。神戸FCは、このAチームを含めて1種登録だけで7つのチーム、200名ほどの登録選手がいる。さらに長い歴史もある。ある程度”いい加減”でも、金さえあればトップチームだけの強化はできるかも知れないが、これだけの数の選手が常に参加しているクラブが中途半端な運営で成立するはずがない。さらに今回出場している選手たちはその中のトップクラスの神戸FC1970Aカテゴリーの選手たちであり、神戸FC全体を代表して戦っている彼らが、もしテキトーなサッカーをしていたとしたら、クラブ内Aチーム以外の1種登録選手を始めとして、シニア、ベテランズ、そしてジュニアが許容するとは考えられない。そもそも”いい加減”で全社に関西代表として出場できるわけがないではないか。さらに(選手側からみれば)応援してくれたオイラたちへの様々な配慮は、立派な社会人だった。

 オイラは、最終的にひとつの結論に達した。彼らは、心底サッカーを楽しんでいるのだと。その楽しみの共有がチームとして、クラブとしての力になっているのだと。そしてその楽しんでいる姿勢にオイラは心底共感したのだと。

 その意味で、彼らには大変失礼ではあるが、オイラは敬意を込めて彼らをこう称したい。

 「草サッカーの天皇!」と。

 そして最後に、これも期待と羨望をこめて、彼らに贈る言葉でしめくくる。

 「よく遊び、よく蹴れ!!!」

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