カントクの寝言  最後のチャンピオンシップ (2004.12.18)
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この10月に引越しのため荷物の整理をしていた時、昔お宝にしていたR&Bのシングルレコードを収めていたケースから1970年代のサッカーチケットが突然現れた時の感動と言ったら、それは筆舌に尽くしがたいほどの狂喜乱舞だった。そしてそのチケットをなつかしく見返すと、日本代表vsサントスFC、ビットリア・セツバル等に混じったJSL半券の多くは三菱重工のカードが多かった。自分がまだ中学生でサッカーに目覚めた頃の最初のサポートチームがこのチームだったのだ。当時、メキシコ五輪銅メダル獲得の影響でサッカー人気が上がってきた頃のJSLの主役は釜本とヤンマーだった。しかし昔よりひねくれ者であったオイラは、釜本のライバルである杉山の所属する三菱重工を応援した。いや、ひょっとしたらそれ以上にヤンマーが関西で三菱重工が関東だったからかも知れない。とすると、1970年代からオイラはJの理念を実践していたのか、なんて・・・。

 その三菱にあまり興味を持たなくなったのはいつ頃からだろうか?杉山が引退し、落合、松永、足利、大久保、横山、森、菊川、大仁等々の日本を代表する選手も去り、名取や辻谷はいたけど、当時新進の日産や読売、フジタが木村和司やラモス、カルバリオ等のスター選手を軸に面白いサッカーをするようになり、いつの間にか三菱はオイラの中では地味なチームになってしまっていた。(と言っても、新進の日産、読売でなく古河や鋼管のゲームを中心に見ていたオイラはやっぱしひねくれていた。)そして、三菱のユニがいつ青から赤に変わったのかもよくわかっていなかった。(補足:いつだか忘れたが天皇杯で緑のユニを着用していたこともあった気がする。)

 時は経て、2004年12月11日。オイラは真っ赤なサイスタのメインスタンドS席にいた。

6万人『全員』で勝ち取ろう!
『全員』で声を出せ!負けは許されない。
俺達の声が勝利を導く。
誰にも頼れない。
一人一人『全員』の力が必要だ。
浦和に歓喜を!!

この檄文チラシを始めて目にしたのは、ゲーム開始2時間前、南門ゲートにたどり着いた時だったと思う。その瞬間、あまりの利己的な文章にオイラはそのチラシを破ろうとした。カチンときたのは「6万人」だ。その中には横浜Fマリノスのサポーターも、そしてオイラのようなどちらのサポーターでもない観客も含まれている。いや、今までの通例で言えばCSだからこそ「観客」の割合は多いはずだ。せめて”サポーター『全員』”にしろよ、と思った。

ゲーム開始30分ほど前に席につく。そして選手入場の10分程度前だろうか、サポーターの代表がS席に来て、「さあ、立ち上がろう!」的なメッセージボードを掲げる。オイオイ、ここはS席だぜ、老人の方とかもいるんだぜ、座って観戦したい人もたくさんいるぜ、それを”強制的”に立たせるってどういうことだ、せめてフランス予選のウズベキスタン戦前のように、挨拶くらいしろよ。オイラは「6万人」のチラシに続いてのこの自分勝手な行動にかなり激怒気味だった。

しかし、オイラの気持ちを一変する出来事が起こった。それはゲーム開始直前だった。さきほど「さあ、立ち上がろう!」のボードを持ったサポーター有志が今度は「ご協力ありがとうございました。ご着席ください。」という主旨のボードを持って周囲を歩いた。立つことの強制はオイラの誤解であり、彼らのメッセージはあくまで選手入場時だけのお願い事項であることに気が付いたのだ。が、オイラの過ちはこの誤解だけでは終わらなかった。

ゲーム開始。スタジアムは、横浜Fマリノスのサポーターがいるビジター席を除き、真っ赤だ。それも、ただ赤いレプリカを着ているだけではなく、S席もゴル裏も、そして老若男女が揃って声を出す、手をたたく。その一体感は本当に圧巻だった。オイラはこんなスタジアムの雰囲気は始めてだった。声だけならユーロのポルトガルvsイングランドも凄かった、拍手だけならあのウズベク戦も凄かった、しかし声と拍手とビジュアル(赤)が全部揃ってスタジアムの大部分を占領したその光景は本当に凄いものだった。

オイラの前に座っていた中学生が声を出す、その横にいるご老人が一生懸命手をたたく、全てがゴル裏のリードによって、自分だけが目立つとか、受けを狙うとかじゃなく、本当にココロから浦和レッズというチームを応援しているのだ。その懸命さ、その暖かさはJ創設当時の鹿嶋に似ていた。

そしてハーフタイム、オイラはもうひとつのことに気が付く。例の檄文チラシが、トイレにもコンコースにもいたるところに貼ってある。その総数は一体何枚あったのか。そのチラシを貼ったり、配ったりするのにどれだけの労力を消費したのか。そしてこの前半の応援に相まって、オイラは「6万人」の意味が何となく理解できた。つまり、「立たなくちゃダメ」とか「ハタ振らなくてはダメ」とか、そうしなくては「サポーターじゃない」とかの垣根を外して、本当に「全員」で応援したいという気持ちの表れが「6万人」という比喩だと気がついたのだ。そう気が付くと、このチンピラ風な檄文がオイラにはとてつもなく暖かいかつサッカーに愛を感ずるメッセージに思えてきたのだ。そして前半よりもさらにさらに熱くかつ一体感のある後半、延長のスタンドを感じ、こんなサッカーの雰囲気を日本で表現できた浦和サポーターに感激してしまった。

日和見になりたくないのではっきりしておく。オイラは浦和レッズと鹿島アントラーズが大嫌いだ。だからこの夜も何かと愛着のある横浜Fマリノスを応援していた。だからS席であれ、拍手も何も一切の協力を拒んだ。これがレッズ側のゴル裏であれば失礼な態度だが、ホームとアウェイの境がないS席では個人の自由という当然の理屈と思っている。が、それにしても、この夜の浦和サポーターは本当に真摯でかっこよかった。マリノスの勝利を願いながらも、一瞬このスタジアムの雰囲気が来年のクラブ世界選手権決勝で見れたらすごいなんて妄想をしてしまった・・・。で、来年は少しは駒場に行こうかな、なんて思ってしまう自分にちょっとダメ出しだす

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