カントクの寝言  road to germany 第7章「同調」 (2005.2.10)
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■on the ball

 レフェリーのホイッスルが鳴った瞬間、多くのまともなサッカーファンと同様に僕の心は、歓喜でも怒りでももちろん悲観でもなく、安堵感が支配した。それは勝点3を獲得できた事実に対する素直な気持ちだったと感じる。

 この日、ファミマやJFAでのチケット争奪戦に敗れた僕は某闇ルートを使用せざるを得ず、その席は北朝鮮ベンチの真上のしかも3列目であった。ゲーム前、安英学が朝鮮サポ席に挨拶をすませベンチ方面に帰ってくる。また彼の律儀な性格が態度に表われたのだろう、その帰り際のカテ1席日本ファンにも手を振っている。そして僕の目の前を通り過ぎようとした時、
「早く日本へ戻って来い!アン。Jで頑張れ、アン。」
僕はでかい声で彼に声援を送った。

 まだカテ1においては座席の半分も埋まっていない時間、僕の声は確実に彼の耳に届いた。そして彼は一瞬(まちがいなく)うなずきかけ、直後に今日の試合における自分の立場を察し無視した。この一瞬の躊躇を見たとき、僕は今日のゲームの楽勝を予感し、開始4分での先制でその気持ちは確信に変わった。

 時計はその確信から約90分進む。あのオマーン戦とはちがい、これは最終予選である。だからこそ、もちろん勝って欲しかった。しかし、勝つことよりももっと重要なことは負けないことであるのも、厳しい予選の真理である。勝って欲しいという希望、引分けでもよしと考える現実、負けてはいけないという絶対、僕の心はこの絶対に結果としてはひとつに集約される3つの現象が錯綜していた。その時に大黒の見事な反転からのシュートがゴールネットを揺らした。

 2−1、それは予選、対戦相手というシュチュエーションからは可もなく不可もない結果だろう。しかし、そんな内容の過不足を後で論じるよりも、勝点3を獲得したという結果だけを評価すればよい。それが予選なんだと思う。

■off the ball

 冒頭の安堵感を所持しスタジアムを後にした僕は、当たり前となった混雑の中を埼玉高額鉄道「浦和美園」駅に向かう。そして当たり前の混雑の中で電車を1台見送り、列の最前列から埼玉低速鉄道に乗車に座った。電車が動き出し、ご立派な立地に位置しご立派に観やすい専用スタジアムを後にし始めた頃、自分の心に何かひっかかるものを感じていた。

 なんと僕は北朝鮮のサッカーに感動とは言わなくても、間違いなく同調していたのだった。

 サッカーの文脈であれ、それ以外であれ、僕は朝鮮半島が嫌いだ。よって、スポーツという分野において、例えば五輪の何かの種目で朝鮮半島の選手が試合をすれば、その相手国の選手を応援する。その嫌いな理由を唯一スポーツという文脈で表現すれば、それは彼らのいやらしい執着心に嫌悪するからであろう。事例としてソウル五輪のボクシング選手座り込み事件、そして前回W杯でのスケートパフォーマンス。いずれも南側の事例ではあるが、北側も大同小異であることはスポーツ以外を含む多くの事例が証左している。その僕が北朝鮮サッカーに同調してしまったのだ。

 その理由のひとつは、安英学、李漢宰という「日本人」が在籍していたこともあるかも知れない。しかし、それ以上に彼らのサッカーに、もしくはこのゲームに臨む「真摯」な気持ちが見事なスポーツマンシップとして表現されたことに同調したのだ。

 もう少し詳細に記す。彼らのサッカーは日本代表と比較すると、スキルもスピードも戦術も数段落ちる。また経験も低く、特にゲーム開始早々、5番が草サッカーのスイーパーのように他の選手より10m近く低い位置で守っていたのにはびっくりした。これは後に修正されたが、多分気持ちとして浮き上がっていたろうあの守備位置がアレックスへのファール、ひいては小笠原の得点に通じたのは間違いないと思う。しかし、それらの不利な状況を彼らは気持ちでカヴァーしようとした。後1歩走る、後1歩踏ん張る、一番簡単そうで一番困難なことを彼らは必死で実行した。また同点後も大袈裟な時間稼ぎをせず、必死にボールを追った。確かに(日本からみて)危険なファールもあったが、これも「必死」が生んだ必然で故意ではなかった。そのサッカーに、揶揄的な意味ではなく高校サッカーの爽快感を感じたのだった。

■next time

 もし引分けていたら、万が一負けていたら、僕は上記のようなことを感じなかったろうし、ましてや記載できる気分にはならなかった。その意味では勝者の不遜なのかも知れない。でも北朝鮮チームが「必死」だったことは、きっとしっかり観ていた人には伝わったと思う。それだけに、マスゴミはくだらない両国関係や両国サポのおちゃらけ応援なんかを追わずに、きっちりこのチームを報道してあげればもっと本来のサッカーにおける両国関係は健全になったような気がする。と言っても、サッカーを知らないマスゴミには無理な難題ではあろうが・・・。

 さて、ハナシは本題の日本側に戻る。まず1勝。これは何にも替え難い貴重な結果だった。また今日の相手が普通にやればアウェイでも負けない相手であることは選手が一番感じたことだろう。よって、予選突破のためには次戦アウェイのイラン戦で負けないことが重要となってくる。そこでジーコの強運が早速発揮された。なんとアレックスが次戦出場停止となったのだ。これにより、マハタビキアの対面は今より「確実」に守備力が上の選手を投入することが、ジーコの構想を通過せずに決定したのだ。引分けで充分な次戦の対応において、リスクがひとつ減ったのは日本代表にとってとても大きなポイントである。

 但し、もし引分けなれなくても、その結果は昨晩の勝利ほど「必要」なものじゃない。予選は長い。一喜一憂せず、冷静に熱く一緒に戦っていこう。 

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