酔かと〜れ

Perdon,AA Gracies
2000年6月24日
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ある、いい加減なオヤジがいます。年間160試合の観戦歴、代表のゲームとあればカザフだろうがモロッコだろうが有給をとって行ってしまう。フランスW杯の時には観戦記を本にして出版してしまう。こんなサッカーバカですがナント45歳。現役サッカーチーム(ちゃんと協会に上納金を収めている!)の選手です。
カントクはあるところでこのオヤジに会い、尊敬してしまいました。カントクより年上なのにこんなに熱い人がいるのだ、と。
そのオヤジが遂に転職しました。その時送られてきたあいさつ文がコレです。まさにいい加減オヤジの真骨頂!カントクの思っていることを先にやられてしまいました。しかも、この表題。泣かせます、感心させられます。わかんない人はサッカーの歴史を勉強しなさいって!

HP掲載に関しては本人のご承諾をいただいています。また社名、本人名は仮名と致します。
Kです。 (お知らせ)

   いささか強引ではありますが、私の好きなサッカーの試合時間である90分を己の生涯に使える時間と対比し、1分を1年と考えますと私は丁度、今前半を終了しハーフタイムに入っています。ハーフタイムとは休息であることは勿論ですが、後半のゲームプランを考える重要な作戦タイムでも有ります。

プロとしての誇りである他の複数チームからのオファーを受け、私は自分自身の前半を振り返ってみました。多くの方がそうでありますように、私の前半も良くも有り悪くも有り…言ってみれば、1対1の同点状態といえると思います。当然今後45分間の戦い方を考えてみました。しっかりと守りを固めて手堅く同点のまま勝ち点1をとるか?あるいは攻勢に出て勝利を狙い一気に勝ち点3を狙うか?私は昨年から長考に入ってしまいました。

当然です。勝利の際与えられる勝ち点3を狙う為にはサッカーであれば、ディフェンダーを攻撃参加させ、全体を押し上げアグレッシブに戦わなくてなりません。攻撃を重視すれば当然リスクも多くなります。全体を押し上げれば当然防御が手薄になり、そこを相手につかれれば、たちどころに失点を余儀なくされ、勝ち点1どころか敗戦に至り勝ち点0で試合を失うことも当然考えなくてはいけません。

私は悩みました。
私の後ろには家族が控えています。家族は当然引き分けの人生で充分だと言います。
でも男として勝利を得てみたい…。

  悩んだ末、私はこの決断をあるサッカー選手に委ねました。私の好きな彼もまた今期からチームが変り(すなわち転職…?)新しい環境に馴染まんものと努力しています。しかしながら従来のチーム(会社)との期待役割の違いからか思ったほどのパフォーマンスを今日まで発揮していませんでした。
私は彼の生きざまと今の自分の環境をオーバーラップさせることにより今後の私の進むべき方向を見出そうとしました。

  2000年2月13日、私はイタリア・ローマから100Km余り離れたペルージャ市レナト・クーリスタジアムに立っていました。私の今後の人生の進み方を勝手に掛けられた男、そう中田英寿の姿をしっかりと見る為です。前述の通り今期の中田は期待役割の違いからプレーに戸惑いがみられ、本来の彼のパフォーマンスからは想像も出来ないほど、いわゆる悪い出来の仕事が続いていました。
彼がもし今日も良いパフォーマンスを発揮できない場合はきっと私も次の会社で良いパフォーマンスを得られないでしょう。私も移籍を断念しよう、しかし、もし今までと違い本日見違えるようなパフォーマンスを発揮してくれたなら、それを今後の私自身の勇気に代え、思い切って人生の後半で勝利を目指してみよう…。

   果たして当日の彼のパフォーマンスは、従来のそのポジションでの彼のプレーのイメージを払拭すべきすばらしいパフォーマンスを私に見せ付けてくれました。まるで転職しても頑張れるんだぜ!!と私を励ましてくれているかのように…。
しかしながら「未練」というやつでしょうか、その段階でも私は確信を持って決断に踏み切れませんでした。――正直それほどAA社は良い会社です。――

そこで私はもっと厳しい要求を彼のプレーに委ねました。良いパフォーマンスを…からかなり進み、今日私の前でもしゴールを揚げることが出来たら…へ。本来ディフェンシブ・ハーフという守備的なポジションを担わされている中田に対してゴールをその試合で要求すると言うことは、言い換えてしまえば、まずゴールを揚げることは難しいだろうから結果的に移籍に(転職)対する悩みから開放される…移籍しないで済む…というものでありました。
事実彼のポジションでゴールを揚げることはかなり難しいことであり、世界的な名選手でも年間で2〜3ゴールも揚げれば充分合格点が与えられる・・というものでありました。

しかし、私の今後の人生を大きく変える出来事に遭遇することになるまであまり多くの時間は必要ではありませんでした。
前半26分、ゴール前の混戦からFWのモンテラがボールを後ろに流しそこに飛び込んできた中田英寿、ゴールに対して右足を強振!と思いきや、ゴール前のディフェンダーの位置を確認しフワリとボールを浮かす、いわゆるループシュートを放ちました。
私が固唾を飲んだのは言うまでも有りません。このボールの行き先に今後の私の運命が委ねられたのです。ボールがゴールに向かって行く、ほんの2〜3秒が本当に私には非常に長い時間に感じられました。必死に戻るディフェンダー、ボールの行方もゴールの中か外か…

戻るディフェンダーを嘲笑うかのようにゆっくりとしかし力強くボールがサイドネットを揺らしたとき私の長考は終わりを告げました…。

移籍します。プロの選択として!!

足掛け19年間の長きに渡り本当にお世話になりました。2000年6月20日を持ちまして私、Kは本当にすばらしい会社、AA社を卒業致します。

長い間本当にありがとうございました。

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