7月5日
 「Augsburg イングランド戦」
   
1位抜けの準備完了
敗戦ショックでゲーム中の写真なし。これは試合後のレストラン。
敗戦後のAugsburg中央駅
なぐさめられた仲間その1
なぐさめられた仲間その2

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それまでのグループリーグ戦績は、なでしこ2勝、イングランド1勝1分、メヒコ1分1敗、NZ2敗。メヒコがなでしこに0-4だったゆえ、イングランドの立場としてもグループリーグ突破はよほどのことがない限り安全なのだが、さらに上を狙う場合決勝トーナメント1回戦でA組1位になるであろう開催国ドイツとは対戦したくない。したがって、イングランドは勝利、なでしこは引分け以上でグループ1位通過が絶対的な目標となるゲームだった。

キックオフ。ポゼッションはなでしこが優勢だが、イングランドはそれを見越したような深く厚いDF網を引く。つまりなでしこにわざと回させているのだ。なでしこからみると、パスは回る、回るがどこに横パスしても相手のDFが多数いるため、陣形の崩れを作れない。そのため、あせって無理にタテパスを入れると、2人がかりでカットされ、ロングボールのカウンターをくらう。またイングランドFWのアシが早くカウンターを食らうと、なでしこDF陣は”一生懸命”戻らなくてはならなくなり、消耗するいやな展開。

最初の失点はこんな状況からうまれてしまう。カウンター一発にこちらのDFもなんとか戻るが、相手9番が”蹴っ飛ばした”ボールが、GK上をウンワリ飛んでゴールに吸い込まれてしまった。またしてもなでしこらしい失点である。いや、なでしこらしいという表現は適切じゃないかも知れないが、W杯予選のオーストラリア戦でも同様に、GKの身長が「普通」だったら、絶対にありえない失点なのである。ゴールの高さは8フィート(2.44m)ある。身体能力以前に身長170cm程度の選手が「物理的」に守れる高さではないのだ。が、なでしこには(あるいは日本女子サッカー選手には)175cm以上のGKがいない。やみくもな大型化は女子バレーで証左されるように反対であるが、それにしても今のなでしこにおいて、GKが170cmしかないというのが弱点となっていることはまちがいない。

この失点でなでしこは浮き足立ってしまう。ボールは回せる、しかし崩せない、カウンターで決定的ピンチをむかえる。まるで数年前の女子国際試合のよう、使いたくない言葉だが、フィジカル「だけ」で叩きのめされてしまう。こんな展開を打破するには、多少無理な体勢からでもカラダをはってタテパスをおさめるプレーヤーが必要なのだが、その適任である永里が不調で彼女へのパスは、彼女のターンは、ことごとくイングランドDFの餌食となってしまう。

結局この展開は最後まで変わらなかった。こうしてなでしこは2勝1敗の2位でグループリーグ、そしてオイラたちの最終戦を終了してしまった。

茫然自失である。夢の決勝戦ドイツ-なでしこが(実際にはドイツのグループ最終戦はこの後だが)消滅し、トーナメント1回戦で対戦することとなってしまった。勝ち目はまずない、ということはなでしこのW杯もあと数日で終了してしまう。2006年のブラジル戦も惨敗だった。しかし、あの時のあのチームなら、あの惨敗はある程度予想できた。それと比較して今回のなでしこは、あの時のあんなチームとは異なっていたはずだ。それだけにオイラのショックは大きかった。

スタジアムからの帰り、青と白でカラーリングした髪の、アタマにドイツと日本の国旗をつけている、はたまた青いカツラを被っている「青い」中年オヤジ、おばさんは、相変わらず注目の的だ。同じ道を歩いている、ドイツの人々からゲーム前と同じようにフレンドリーな言葉を受ける。しかし状況が違う。トモコさんとナオちゃんは、それでもそれなりの交流をしていたが、オイラは全くそんな気になれない。何か笑顔で言われても、「はー」「へー」のみ。しまいには「負けたのだからほっとけボケ。」とか言ってしまう。(すみませんでした。)

トラムはAugsburg中央駅に着く。同行の2名はオイラの不機嫌に気を使い、W杯の匂いのしないMunchenまで帰ろうという。そう思い駅まで向かったが、何かがなごり惜しい。負けた思いは消し去りたいのだが、W杯にもう少し浸っていたいような思いもある。そして結局Augsburgの適当なレストランでメシを食うこととした。そしてそのレストランのTV中継で、なでしこ-ドイツが決定したことを知った。街中は既に暗く、騒ぐイングランド人なんて結局最初から最後まで1人もいなかった。こんな悲しい気持ちでオイラのW杯は終わろうとしていた。

夜も更けて、Munchenのホテルへ戻る電車に乗る。そこで乗り合わせたのが、なでしこサポーターの太鼓隊の連中だった。オイラたちがクダをまいてメシを食っている間、ゲーム後のなでしこを見守ったり、片付けをしたりしていたのだろう、まだメシも食っていないそうだ。が、負けたのは一緒。全員ぐったりとしてMunchenへ向かう。そこに乗り合わせたのが、30年ドイツに住んでいる日本人女性とそのダンナ(ドイツ人)。ダンナはがんばれ!なでしこと書いた大きなうちわを持っていた。自然に会話になる。「日本から来たの?すごいね。」と奥様。「いや、彼ら(太鼓隊)は決勝までいるそうですよ。ボクらなんて足元にも及びません。」こうして、ドイツ在住奥様、太鼓隊、オイラ達の会話が進行していった。他愛もないハナシである。他愛もないが暖かい。みんなサッカーが、なでしこが、そして日本が好きなことが底からわかるやさしい会話だった。オイラはなぐさめられた。不遜を承知で言えば、太鼓隊も少しはなぐさめられたのではないだろうか。

電車は遅れて深夜にMunchen到着。ドイツ在住奥様に全員がビールを奢ってもらい解散した。とても暖かい帰り道だった。その暖かさになぐさめられたオイラは、ホテルへの帰り道でフッと思った。オイラは何でなでしこにシンパシーを感じるのか?それは彼女らの「ひたむきさ」に対してだ。そしてどんな大会でも、開催国や格上チームに驚きの勝利をしている。今回、彼女たちはまだ「驚き」を与えていないではないか、そしてそのまま帰国するようなチームじゃないだろうと。

そしてホテルに到着する頃、ドイツに勝つかもしれないと思っていた願望は確信に変わった。彼女たちなら絶対に勝つ!と。

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